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弟の悲しみ9
「んぅっ、んっ、美味い…よ。辰之が感じてるがのわかる。イヤラしい汁がいっぱい出てる」
裏筋の根元から先端に向けて、舌先でスーッとなぞってやる。
「ひゃぁん♡ それヤバいっ!」
「あとはどこが感じるだ?」
なんとなくわかっていたが左手で玉を触りながら、あえて質問を投げかけた。
「ああっ、あ、ああぁあ♡ お尻も触ってほしいっ…バイブを取ったときみたいにぃ、ッ……兄貴の指でごしごしされたい」
鼻にかかるような甘ったるい声で強請った辰之の上半身を、俺は無言で押し倒した。
「うぅんっ!? 兄貴?」
突然なされたことに驚いた辰之は、狼狽したような妙な瞬きで俺を見つめる。
「それ、若林先輩にされて気持ちよかったから、俺にされたいだけだろ」
無性にイライラした。誰かにされて気持ちよかったことを強請る辰之に苛つき、その相手を嫉妬せずにはいられない。胸がきゅっと締めつけられるような気分ははじめてだった。
「違う! 俺は兄貴がしてくれることの、すべてが気持ちいいんだよ。若林先輩なんて関係ない」
必死な様子の辰之のセリフを無視して、ブレザーのボタンを外し、邪魔になるネクタイを手で退けてから、ワイシャツのボタンを手早く外して口を開く。
「アイツと何度も寝てるんだろ。そのたびに辰之は若林先輩の手で、とことん感じさせられたに違いないって」
肌に残るたくさんのキスマークを、指先で次々となぞった。そのたびにぴくんと跳ねて感じる辰之は、震える声で告げる。
「わっ、若林先輩にヤられたのは、音楽室のあのときだけだよ。選ばされたんだ、抱かれるかバイブを入れるかの二択で」
「なんだよ、それ……」
(好きな相手にそんな信じられない選択をするなんて、若林先輩はいったいなにを考えてるんだ……)
自分では思いつかないことをする若林先輩に驚愕していると、辰之が悲しげな表情を浮かべて語りかける。
「若林先輩に抱かれないようにするために、俺はバイブを入れることを選んだ。理由は兄貴以外に、この躰に触れられたくなかったからだよ」
「辰之は、俺のこと――」
「好きだよ。兄貴以外、誰かを好きになるわけないじゃないか。大嫌いって言っても、言った分だけ兄貴が好きなことを実感させられて、すごく苦しかった。考えれば考えるほどに、好きが濃くなっていったんだ」
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