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特別番外編【Voice8】
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「う……。あれ?」
背中の痛みで目が覚めてから、下半身の違和感を同時に感じた。情けないくらいに泣いたせいで、まぶたが重くて視界が狭い。
恐るおそる起き上がり、自分の状況を確認してみる。脱がされた下着とスラックスはちゃんともとに戻されているだけじゃなく、床の汚れで所々白くなったブレザーが、きちんと叩いて汚れを落とした形跡があった。
「そうだ、スマホ!」
階段からおりてくる箱崎と目が合い、ちょっとだけ面食らったんだ。辰之くんといい仲になってから、箱崎は俺のことを冷たく接してくるせいで、話しかけづらかったから。だけど無視してそのままやり過ごすよりも、軽く挨拶してかわしてやろうと考え、「よぉ」と声をかけた。
俺が現れた時点で気に食わなかったであろう箱崎は、なにも言わずに頭を下げた。立ち止まった俺を最短距離でやり過ごそうとしたせいで、俺の腕と接触した。あっと思ったときには、スマホは手から落下していた。
俺よりも先に箱崎がしゃがみ込み、スマホをキャッチしたのを見た。辰之くんの卑猥な声を聞いていたのを知られたくなかった俺は、箱崎の手からスマホを取りあげたくて、イヤホンを強く引っ張ってしまった。
その結果、イヤホンジャックが抜けてしまい、辰之くんの声が盛大に披露されることになった。箱崎の怒りは頂点に達して、俺は襲われてしまったわけだが。
(あんな物騒なモノ持ってるなんて、箱崎ってばすげぇ怖い。しかも俺のこと嫌いなクセに、そのまま放置するんじゃなく、できる限り綺麗にしてくれるなんて……)
そこに他意があるわけじゃないのはわかっているのに、確かめずにはいられない。だって、ケツの違和感が半端なかったから。もしや最後までヤったんだろうか――。
「バリタチの俺が、ネコになる日がくるなんてよぉ……」
未だに残るケツの違和感に顔を歪ませながら、ポツリと呟いたのだった。
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