105 / 114

特別番外編【兄貴の愛情の表し方3】

「ちなみにこれはご褒美じゃなくて、俺からの差し入れな」 「差し入れ?」  一瞬だけ快感を遠のかせた兄貴の言葉で、僕の頭の中に疑問符が浮かんだ。 「辰之が次回のテストに向けて一生懸命に勉強した形跡を、机の上の状況から確認させてもらった。これなら絶対に、クラスで一番になれる!」  吐息まじりの兄貴の唇が、僕の首筋を這っていく。同時にカタチの変わった硬くて大きなモノが、上下に尻に擦りつけられた。布越しでも伝わってくる兄貴の熱に、頭がぼーっとしていく。 (――これってば差し入れじゃなくて、差し挿れというべきじゃないのか!?) 「僕は一番になれる、かな?」 「俺に夜這いしてほしいんだろ?」 「されたい……」  兄貴に愛されたい。それを見える形で体感したい。 「辰之、好きだ」  僕が求めていることがわかるのか、兄貴は耳元で告白してくれた。長く一緒にいるお蔭で、そういう察しの良さに何度助けられたことか。その感情は家族愛が伴うことがわかっていたものの、兄貴を好きになった理由のひとつになっていた。 「宏斗兄さんが好き。誰よりも好き!」  服の中に忍んでいる腕を抜いてから、くるりと躰を反転させて、兄貴の躰に抱きつく。家族愛から恋愛に発展した今、こうして僕を求めてくれることに喜びを覚える。 「兄貴っ…兄貴が好き! 僕だけを見て、視線を逸らさないで」  薄暗闇の中でもわかる、大好きな兄貴の顔。愛おしそうに僕を見つめていた。 「辰之こそ、俺だけを見てろよ。この間屋上で箱崎にキスされたときは、驚きの中に嬉しさが表情にちょっとだけ滲んでいたぞ」 「嬉しくなんてなかったよ。僕は兄貴のものなのに」 「本当?」  嬉しくないと即答したのにそれを無にする感じで、兄貴に問いかけられてしまった。 「本当だよ。こうして僕に触れることができるのは兄貴だけ。もう誰にも触れさせない」  兄貴の下唇を食みながらキスした。 「ぅんっ!」  上下の唇で兄貴の下唇をやわやわと食みながら、ちゅっと吸いあげる。僕を感じさせる兄貴の唇を優しく愛でてあげると、肉厚の舌が容赦なく口内に入り込む。 「あ、あに…きぃっ」  上顎をなぞられた瞬間、食んでいた兄貴の下唇を放してしまった。ぞくりとした快感を与えられたせいで、腰から下がジンジンする。 「俺から辰之に差し入れしてるのに、感じさせてどうするんだよ」 「だって、兄貴の感じるところが見たかったんだ」  僕の行為で感じる兄貴を見たかった。いつだって見られるものじゃない、限定品なんだから、それは当然なのに――。

ともだちにシェアしよう!