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特別番外編【兄貴の愛情の表し方4】
「そんなことされたんじゃ、ちゃんと差し入れできないだろ」
兄貴はほかにも文句を言いつつ、ちゃっかり僕の服を手際よく脱がしていく。衣擦れの音が、静まり返った部屋に聞こえるだけで、これから兄貴に抱かれるという興奮に繋がった。
「兄貴も脱いで」
「わかってる。辰之はおとなしく俺に脱がされてろ」
「我慢できない。早く!」
最後まで脱がされた僕は、迷うことなく兄貴の下着に手を伸ばした。
「がっつきすぎだろ」
「がっつきたくもなるよ。だって今回のテスト、かなり自信があったんだ。兄貴からご褒美がもらえるっていう確信があったのに、結果を見た瞬間、声をあげそうになったくらいに絶望しちゃって」
兄貴は下着を掴んだままでいた僕の手を外し、自分で手早く脱ぎ捨てた。
「テストの結果で絶望って、その表現もどうかと思う」
「兄貴こそ信じられないよ。僕が大好きな兄貴に抱かれることを、どんなに待ち望んでいたのかわからないなんて」
「辰之こそわかってない。前回おまえを抱きつぶすくらいに抱いてしまって、俺が深く反省しているってことを」
「兄貴が反省? どうして……」
告げられた言葉の意味がさっぱりわからず、ベッドに横たわった状態でぽかんとした僕を、兄貴は優しいまなざしで見つめる。難しいなにかを教えようとしてくれる時に見せるその面持ちに、自然と胸がときめいてしまった。
「バレー部の部室でおまえを抱いたあのとき、誰よりも感じさせてやろうと思っていたのに、後半は辰之が俺を感じさせていたよな」
「兄貴が感じてるところを、たくさん見たかったから」
「俺はそれに応じてしまった。辰之の限界も考えずに」
「あれはほら、僕の体力不足が原因だと思うよ。兄貴の性欲の強さに合わせて、僕も頑張らなきゃなぁと思ったりして……」
さりげなく指摘したはずなのに、目の前にある顔が真っ赤に染まった。
(兄貴のこういうところ、本当にかわいすぎる。できることならどこかに閉じ込めて、誰に目にも触れさせたくない)
「辰之、変なこと考えてるだろ。顔があやしい」
赤ら顔をそのままに、この場の雰囲気をごまかすように兄貴は僕に話しかけた。
「どうやって、兄貴を感じさせようかなぁと思っていたところだよ」
「今夜はそんなこと、考えなくてもいい。素直に俺に抱かれてくれ」
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