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特別番外編【兄貴の愛情の表し方5】

 大好きな兄貴の声で告げられた言葉が、染み入るように鼓膜に貼りつく。僕だけを求めるそれに、素直に応えようと思った。 「ぁっ…宏斗兄さん」  躰に感じる圧し掛かかる重みと触れ合う素肌の熱で、呼吸が簡単に乱れていく。 「ん? どうした、苦しいのか?」  なにもしていないのに息が乱れている僕を見て、兄貴は少しだけ躰を持ちあげた。触れていた面積がちょっと少なくなっただけなのに、それがすごく切なくて、両手で兄貴の上半身に慌てて縋りつき、ぎゅっと抱きしめる。 「苦しくなんてない! 兄貴の傍にいるだけで、嬉しくて堪らないんだ。ずっと離れたくない」 「辰之……」 「早く兄貴で満たされたい。僕で感じる姿が見たいよ」  薄暗がりでもわかる兄貴の笑顔。瞳を細めて笑いながら、僕の唇にキスをした。触れるだけのキスを数回してから、強く唇を押しつけたあとに舌を挿入する。肉厚の舌が口内の感じる部分を探るように、容赦なく蠢いた。 「ふぅっ…あぁっ、んっ」 「辰之かわいい。もっと声を出して」  耳元で囁かれたセリフに応えたいのに、兄貴との関係が家族にバレたときのことが頭を過るせいで、声を押し殺してしまう。 「もしかして感じてない?」 「違っ、だってここは家だから……」 「それとも辰之は、俺を抱きたくなったとか?」 「へっ?」  きちんと理由を告げたというのに、兄貴は突飛なことを口にした。 「ぼ、僕が兄貴を抱く!?」 「辰之だって男だろ。ヤられるよりヤリたくなったのかと思って」  それまで与えられていた快感が吹き飛ぶ内容に、開いた口が塞がらない。兄貴を抱くなんてこれまで想像したことがなかったせいで、目を瞬かせるのが精いっぱいだった。 「兄貴……」  顔の傍にある兄貴の表情は至極マジメで、からかっている様子がまったくなく、まじまじと僕を見つめる。 「……兄貴は僕に抱かれたいの?」  震える声で僕が問いかけた瞬間、兄貴の瞳が嬉しげに細められた。それだけで答えがわかってしまう。きっと僕が強請ったら、あっけなく躰を差し出すだろう。兄貴は僕のお願いを、なんとてでも叶えようとしてくれる人。兄弟になってから――そしてこうして恋人になってからも、大切に接しているからよくわかる。 「おまえが望めばだけど。でもやっぱり恥ずかしいかな。だって――」  言いながら顔を離した兄貴は起き上がり、両手で僕の両膝を軽々と持ってМ字開脚させた。 「俺がこんな格好してる姿を考えるだけで、気が狂いそうになる。辰之は恥ずかしくないのか?」

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