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上野クンの高校事情(日常編)-1-

ひらひらと桜の花びらが舞う。そんな春の柔らかな日差しに、明らかに異彩を放っている男がいた。 「なにあいつ……」 「不気味すぎ、怖いんだけど……」 艶やかな長い漆黒の髪。片方の目を前髪が覆い隠しているが、露わになっている目は鋭い眼光はそのままに、まるで爬虫類のような目をしている。さらに、真っ白な肌に赤い唇が映えていて不気味であった。 周囲はヒソヒソと小声で話すが、本人はまったく気にした様子もなく……と言うよりそれどころではない。 (やっべぇ、 緊張してきた! 心臓バクバク鳴ってやがる。落ち着け俺……クールクール…) 心の中で呟き、深呼吸をする。あ、ちょっと楽になったかも。 (ふっふっふ……、まだ学校にも着いていないのに緊張してどうするんだよな。それに俺はこれからのスクールライフを謳歌するんだし…) ──そうだ、スクールライフ! 俺は晴れて花の男子高校生になったんだ! 男子高校生、なんっっていい響きだろう。なにもせずとも、可愛い子ちゃんに囲まれるという、あっま〜い青春が俺を待っているのだ。ビバ! 青春! 俺は青春の波を乗りに乗り、そしていずれハーレムを作りあげるのである!! 「なんかひとりごと言ってんだけど」 「キモいよね〜」 そう、この頭の痛い男こそ、物語の主人公である上野咲舞(かみの えま)。この春から私立東学園高校に通う男子生徒だ。 新しい学園生活への意気込みは人一倍熱い。 だが残念なことに、彼が望むハーレム生活は、ほど遠い道のりだということはまだ知らない。

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