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-11- 鳳 清四郎
ズドーン! と地鳴りのような音が一年の廊下に響いた。
一年の廊下は最上階。つまり、一年の廊下が響くとなると必然的に下の階にも響く。東高の生徒会室は一年の階の下にあり、生徒会室で親衛隊の帰りを待っていた生徒会長の鳳 清四郎 ( おおとり せいしろう ) は嫌な予感を感じた。嫌な予感がする時は、必ず頭痛がする。
主に頭痛の原因になっているのが──
「俺を連行したいなら美少年を連れてこい! オッサンなんぞといると俺の若さが搾り取られるわ!」
今まさに仁王立ちで、ワケのわからない台詞を吐いている奴がそうだ。
一年二組出席番号12番 上野 咲舞。
入学式に気崩した服装をしていた一人で中でもとびきり目立っていた人物。その後、咲舞が遅刻をしてきたことがあったが、遅刻したことに関して反省の色は皆無。あろうことか、鳳の腰に手を回して口説こうとした猛者である。その時、はじめて生徒を、しかも下級生を殴った。そして、反省文を書いてくるよう咲舞に突きつけたが、結局、その日待てども暮らせど咲舞は反省文を持って来なかったし、今日なんて何度も放送をしたのにも関わらず、生徒会室に来る様子はなかった。そして今やこの有り様。鳳の頭痛の原因になってもおかしくはない。
咲舞は、ふんっ、とただの屍と化した親衛隊を一瞥すると颯爽と去っていた。
それにしても柔道部主将や屈強な男共が揃った親衛隊が、仲良く真っ逆さまに一年の廊下に埋まっているとは…あの一年、中々侮れないな、と少し感心する。
「くっ、くははは! やっぱり面白すぎだろ、あいつ! ひー腹痛い!」
一人笑い転げている金髪の男は確か、間宮 要。あの男も、あまり素行がよろしくないとすでに生徒会の中では有名だ。授業中に一年の男子トイレから男二人分の声が聞こえて、何事かと耳を澄ませると……この先を言うのもなんとも恐ろしい。とにかく、その男子生徒二人のうち一人があの間宮 要という男だった、と聞いている。
どうして今年の一年はこうも問題の多い奴ばかり…その問題がいつか自分に降り掛かるかもしれないと、予感して鳳の頭痛は酷くなった。その予感は、近いうちにあたることを直感していたが、その事実を鳳はまだ受け入れたくなかった。
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