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第1話
僕は町よりうんと遠い、田舎の山の、ずっとずっと先にある平野に建てられた、“コロニー”という施設にいるのだと、先生は教えてくれた。
小さな時から、僕はコロニーで生活している。
施設はとても広くて、僕と同じくらいの年の子たちがたくさんいて、中庭はいつもお日様が照っていて、とても自由な場所なんだ。
1人に1つずつ部屋だってあって、夜はカギを掛けられるけど、それは僕たちを守るためなんだと教わった。
それぞれの子供たちには、主治医の先生だっている。僕の場合は、ドクターテディ。僕より15歳年上の、テディベアと同じ音の優しい先生。
先生は、僕のくりんくりんな金髪とは違って、真っ直ぐな真っ黒い髪をしていて、僕のまんまるな目とは違って、垂れた優しそうな目をしているんだ。
笑うと顔がくしゃくしゃになって、目元にいっぱい皺が寄るんだよ。
僕と先生は目の色も違う。僕はブルー、先生はブラック。僕は先生の、かっこいいブラックの瞳が好きだけど、先生は僕のブルーの瞳が美しいと褒めてくれるんだ。
そんな優しい先生も、時々とても真剣な顔をする時があって、
コロニーは安全だから。
コロニーは平和だから。
絶対に、外に出てはいけないよ。
人差し指を立てて、ないしょ話をするみたいに言うんだ。
だから僕は、はいドクターと答えるの。
そうすると先生は、とても嬉しそうににこやかに笑ってくれるんだ。
「ルディ、検査の時間だよ」
「はい、ドクター」
「グッドボーイ、今日もルディはいい子だね」
先生はいつも決まった時間に呼びに来る。
だからおもちゃの自動車で遊ぶふりをしながら、わくわくした気持ちを抱えて待っているんだ。
検査はとても簡単で、裸になって先生の部屋の診察台の上に乗る。たったそれだけ。
「ルディ、今日も冷たいのを我慢できるかな?」
「はい、ドクター」
「グッドボーイ、ルディは我慢強くてとてもいい子だ」
聴診器を当てて胸の音を聞いた後、背中をとんとんとんとされるのが好きだった。
だけど、それがおわりの合図だから、少しさびしくもあるんだ。
「ドクターテディ?」
「なんだいルディ」
「もうすこし、とんとんとんって、してほしいな」
「しょうがないな、今日だけ特別」
とんとんとん。
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