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告白。
「あの、母さん。話があるんだ」
「なあに? あらたまって」
それは平日の月曜日。
その日はちょうど、母さんは休日で、俺も早く学校が終わったからふたりきりの時間。
リビングにいる母さんを捕まえて、俺はそっと口を開いた。
「俺、ひとり暮らしがしたいんだ。母さん、父さんが死んでから3年間。俺みたいなコブつきがいてさ、仕事頑張ってくれて今までたくさん苦労したじゃん? その分、翔さんや義兄 さんとさ、幸せに暮らしてほしい。そろそろ母さんは俺から解放されるべきだと思うんだ」
「楓? 貴方はわたしにとって大切な子供よ? その言い方だと自分はいらない子だって言っているふうに聞こえるわ?」
母さんは大きく首を振ってそう答えた。
――うん、だけどね。
俺の感情を知ったら、もしかすると母さん、俺を軽蔑しちゃうかもしれないんだよ。
同性 が好きなんてどう考えてもおかしいもんな。
――怖い。
母さんに軽蔑されちゃうのがすごく怖い。
「あの、俺。ね?」
すごく言いにくい。
だけどこれは言わなきゃいけない気がする。
母さんにも気持ち悪がられるかもしれない。
でも……。
大切なこと、だよね。
俺は決意して母さんと向き合った。
「あのね」
ドキドキする。
胸が苦しい。
緊張しすぎて喉だってヒリヒリするし、口の中はカラカラだ。
また少し、沈黙が広がる。
母さんは何も言わず、俺を待ってくれる。
ドキドキするけど、言わなきゃずっとこのままだ。
ギュッ。
手のひらを握って、口を開けた。
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