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可愛くない。
なんだか同情も違う気がする。
だって律さん、楽しそうにクスクス笑ってる。
「そうなのかなって思ったりもしたんだけどね? 確信が取れなくて……」
え?
それはどういう……?
「俺も楓が好きだよ?」
「――うそ」
律さんが俺を好き?
そんなことはない。
だって俺、すごく目つき悪いし、律さんには嫌な態度しかとってない。
俺って全然可愛くないんだ。
胸板を押してほんの少し離れる。
「うそ、うそうそうそ嘘! 違う!」
ブンブン、ブンブン。
首を振り続ける。
そしたら俺の流した涙が散っていくのが見えた。
「嘘じゃない。耳まで真っ赤にして、必死になるところも可愛いと思ったし。お母さん、薫子 さんを支えるために頑張って勉強していたのだって知ってる」
大きな手が半ば困惑気味の俺の頭をポンポンと撫でてくれる。
「事故でお父さんを亡くしてお母さんと二人になって。ただでさえ勉強が大変なのにお母さんを支えるためにアルバイトもして、成績も上位をキープして頑張っていて。過酷な状況なのに少しも擦れてないし。そういうところも健気で可愛い」
「俺、そんなにいい人間じゃない」
ブンブンと首を振れば、
「そんなことないよ」
律さんがすぐに俺を肯定してくれる。
……本当、かな。
俺のこと、本当に可愛いって思ってくれているの?
律さんは、俺のこと、好き?
そっと視線を上げれば、にっこりと微笑んだ。
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