23 / 31

笑顔も格好いいなんて反則だっ!

「――ッツ!」  その笑みさえも格好いいなんて反則すぎる!  俺はしゃくりをあげて、律さんの話に聞き入る。 「実はね、父さんと薫子さんがお付き合いをはじめている頃から、父さんから、『健気な息子さんがいる』と散々聞かされていてね。会う前から君のことを知っていたんだよ。目で追うたびに可愛いなって思っていたし、時々目が合うから、もしかしてと思っていたけれど……」 「あの……」  もう涙は引っ込んでいる。  顔を上げれば、涙の跡を親指の腹で拭ってくれた。  その仕草だけで俺の胸がキュンってする。 「泣き虫なところも可愛いし、バイクの騒音が怖くて俺にしがみついてくる時とか、もっと守ってあげたくなる。俺の保護欲がそそられる」  そう言った後、声のトーンを一際明るくして、楽しそうに話す。 「あとね。弁当に俺が好きなもの、いつも入れてくれてるでしょう? 自分には入ってないって父さんがボヤいてたよ」  フフって笑う吐息が頬に当たる。  こそばゆい。 「そ、れは……律さんに喜んで食べて欲しくて……気づいて、たの?」 「気づかないも何も。だって俺は楓が可愛くて仕方がないし? ずっと見ていたからね」  ドキドキしすぎて焦点が合わない。  目をあちこち動かしていると。 「可愛いだけじゃなくて料理も上手だし。――で、胃袋まで鷲掴みにされちゃった」 「ね、楓が大学生になったら二人で暮らそうか。父さんと薫子さんなしで。そうしたら俺はいつでも楓を独占できるし、楓の手料理だって食べ放題だ」

ともだちにシェアしよう!