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3日前の男の人。
背中に腕が回る。
「父さんたちに楓はあげない」
ギュッ。
もう一度、強く抱きしめられた。
そのすぐ後。
律さんの雰囲気がちょっぴりピリッてした。
「ひとつ気になっていることがあるんだ」
「な、何?」
ドキッ!
律さんってあんまり怒ったことないから空気がピリッてするだけで緊張する。
心臓がドキドキしてる中、律さんは静かに口を開いた。
「3日前ね、楓、学校の帰宅途中で知らない男の人から名刺を渡されていたでしょう? あの人はダメだよ?」
「あ、あれは! もう会ってない」
律さんから離れることしか考えてなかったから。今、冷静な頭で考えたら我ながらすごく恐ろしい手段をとろうとしていたって思う。
「そう? よかった。抱かれるなら俺にしなさい。あんな奴らより俺の方がずっと楓を気持ちよくしてあげるから、ね?」
「抱っ!?」
バクン!
思ってもみなかった律さんの言葉に、俺の心臓がいっそう大きく跳ねた。
――ううん、それだけじゃない。律さんとそういう行為をするって考えただけで顔が熱くなる。
「いいね?」
すごくニッコリ笑って、満面の笑みを浮かべる律さん。
だけど有無を言わせない迫力がある。
「――はい」
コクンと素直に頷けば、律さんはいっそう微笑んで、「よかった」と呟いた。
「さて、薫子さんは4時間は戻らないって言ってたけれど、俺たちはどうしよう?」
これは俺の勝手な妄想なのかな。
だってこんな都合の良いことが起きるハズがない。
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