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《another story》翌朝。(律の場合。)

 チュン、チュン。  窓の外では小鳥が囀っている。  ああ、もう朝か……。  なんて思いながら楓を抱きしめたままでいると、もそもそ腕の中で楓が動く。  昨夜は散々俺を困らせたんだ。  今度は楓が困る番だ。  さあ、どうする?  困り果てる楓を見たくてそのまま寝たふりをしていると、  チュ。  ふいに俺の口が塞がれた。  楓とはこの行為は幾度となく繰り返していたからこの感触は既に知っている。  だけどまさか楓から行動してくれるとは思ってもいなかった。  うっすらと目を開けてみると、頬を染めて小刻みに震える楓の顔があった。  ……可愛い。  体をフルフル震わせて。  顔を真っ赤にしながら、それでも必死にキスする姿が可愛い。  ああ、もう!  楓はいつもこうだ。  俺が楓を困らせるつもりが逆に困らせてくる。  降参。  君には本当に敵わない。 「楓!」  ガバッ!!  もう我慢の限界だった俺は、すぐに楓に飛びついた。  「ひあああっ!」  可愛い声が上がっている。  余計に俺を追い込んでくるから困る。  チュ。  可愛い楓。  チュ。  俺の恋人。  チュ。  泣き顔も、笑った顔も、困った顔も、すべてが愛おしい。  頬に瞼、首筋や鎖骨。  あらゆる箇所にキスを落とす。  だけどそれだけじゃ俺の気持ちが治まらない。  下着をくぐり抜け、しっとりとした触り心地のいい肌に触れる。 「律さ……!?」  楓が狼狽えている。  うん。  そうだね。  今までこんな触れ方したことなかったものね。  今日はここまでにしようか。  そして最後はもちろん。 「んぅうううっ!!」  いっそう長いキス。  バクン、バクン。  心臓の鼓動が、俺と密着した楓から聞こえてくる。  本当は、もっと先に進みたいけれどしょうがない。  今日のところはこれで我慢しよう。  だけどまだ解放してあげない。  俺は楓を強く抱きしめ続ける。 **END**

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