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エピローグ
「薫はもう鶴と一切連絡撮らなくていいから、できるだけ早く俺が鶴と話をつける」
「どうするんですか」
「俺から、そんなことするやつ信用できないっていって、会社行くの蹴るから」
そういうと薫は押し黙った。ある程度予測していたのかもしれない。
「こんなことする兄貴を今後信用できないし、そこまで荒れてる泥沼な兄弟がいる会社とか普通に嫌だし、そんなやつらと薫に縁があるのも無理だ。父親には経緯と会社には行けないことを伝える。大学も、いい奨学金制度あるとこ探して、家出る。薫の事は父親に優遇するように話すから、被害者だし、家にはもう返さないって話す。どうする? 兄貴を訴えることも出来るけど」
「いいえ、それは」
薫は断るだろうと思っていた。本来ならきちっと訴えたいところだけど、実行犯が俺で男同士なのでいろいろと難しい。薫が許さないと言うならもちろん刑に服すけども。
「金はしっかり取るから。なんにも申し訳なくおもわなくていいからな。薫の人権を無視した犯罪だ。しっかり高校も大学も家の金を使って豪遊してから離れてやれ」
「はい」
「武田じゃなくても、薫は一緒にいてくれるか?」
「います。一生」
薫はゆるぎない目でそういった。俺は薫の手を取る、そして昨晩の薫のように薬指にキスをした。
「二人とも就職したら、式を挙げよう」
言葉にすると少しはずかしい。でも言ってやった。
薫が微笑んだ。
「はい」
「なぁ、俺、いま、すげぇ幸せ」
「薫も、幸せです」
早速、先生に進路相談をし奨学金を取れるであろう大学に志望を変更した。きっぱり志望の学部も変更する。これで、いい点が取れれば学費は何とかなる。あとはバイトするしかない。不安しかないけど、薫がいつだって味方だ。
あとは残りの学生生活と、薫との同棲を楽しもうと目先の幸せを思いつつ勉強していると、鶴から連絡があり、至急戻るように言われた。
そこからは予定通りに、話を進めた。
「俺は、家を出ます。会社でも働きません」
鶴はびっくりしたが、すぐに表情を能面にした。こういうところは父に似てきた。
「そうか。お前はやっぱり裏切り者だ。小さいころからお前だけはいつか裏切ると思っていた」
「鶴兄さん、俺は裏切りじゃなく自立するんです。ここじゃないところで家族を見つけたので」
「そんなの嘘だよ」
「嘘でも、本物にしたいと俺は思っています。鶴兄さんどうぞ元気で、兄弟仲良くしてください」
部屋をでた。もう兄と会うことはないだろう。その足で事前にアポを取っていた父と話し、会社に着かないこと、家を出ることを伝えた。
「おまえの好きにすればいい。手の内にいるときは、なんでもしてやるが、出たら何もできないぞ」
「大丈夫です。男ですから。父さん、元気で。たまには家族を顧みて下さいね。じゃないと誰かに殺されますよ」
「あいつらもさっさと嫁でも見つければいいものを。まぁ、ろくな夫婦でいれなかった俺も悪いかもしれんが」
「では」
「あぁ」
次男と三男にも挨拶をしたかったが、この二人には別々で話をしないといけなかっただろう。叔父はこのあと会って、全員の挨拶が済んだら、薫と一緒に島津さんにあいさつにする予定だ。
日が暮れる前に電車に乗ったて、夜手前に寮に着いた。
部屋に帰ると薫がいる。今日話した行くことは事前に言っている。
これで、俺はただの武田源氏になる。
扉を開けた、薫はコロッケで手を汚してる。薫の料理のうではずいぶん上がった。
「おかえりなさい。今日はコロッケです」
「ただいま」
薫の横に立った。手を洗っておれもコロッケのタネをすくって丸くする。
「なぁ、薫。明日も一緒にご飯作ろうな」
「はい」
end
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