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第一章・10話

「700万。いかがですか」  ため息が、もれる。  残念だが、ここまでだ。  たかが玩具に、700万円以上は払う気がしない。 「800万」  どよめきが起きた。  まだ、張り合おうという者がいるのか。  見れば、まだ若い少年だ。  700万の値を付けた男は、プライドも賭けて落としに行く。  会場は、2者の競り合いになった。  830万、840万、860万、900万……。  そしてついに。 「1千万」  かん、と木槌が振り下ろされた。 「1千万円で、落札しました」  信じられない。  こんな痩せっぽちのΩに、1千万の値がつくとは!  一番驚いていたのは、空本人だった。  1千万。  これだけあれば、父さんの借金が完済できる。  僕に、こんな高値を付けてくれた人は、誰?  声は、ずいぶん若かったけど……。  ライトが付いているのは舞台だけで、客席は暗い。  落札者の顔など、とても解らない。 「行きなさい」  司会者に促され、空は袖へ下がった。  手枷足枷が解かれ、服を手渡された。 「すぐに準備して」  慌てて制服を着ると、来た時と同じように目隠しをされた。  手を引かれ、車に乗り、見えない道を移動する。  やがてどこかに着いたようで、屋内へ入った。  椅子に座らされ、目隠しを外すように命じられた。

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