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第一章・9話

 カン、と木槌の叩きつけられる音がした。 「250万円で、落札しました」  身体が震える。  心が冷える。  空は、オークション会場の袖にいた。  全裸で。  逃げられないように、手枷足枷を着けられて。  次は、僕だ。  さっきの子は250万だったけど、僕はどうだろう。  最低でも300万は欲しいと思っていたが、それだけの値が付くだろうか。  できるだけ、高く買って欲しい。  その分だけ、家族が助かるのだから。 「次、行きなさい」  肩を押され、よろめきながら空は袖から舞台へ出て行った。 「100万から、どうぞ」 「105万」 「110万」  空の頭の中は、次々に上がる金額のことでいっぱいだった。  いっぱいで、ぱんぱんで、弾けそうだった。  どうか。  どうか、高値を付けて。 「400万。いかがですか?」  木槌が振り下ろされそうになったその時、若い声が上がった。 「500万」  会場が、ざわめきを取り戻す。  痩せてはいるが、顔立ちの整った綺麗なΩだ。  メニューに書かれた特技に、ピアノ演奏、とあることも魅力の一つだった。  こんなきれいな子にピアノを弾かせ、気が向いたらベッドでの奉仕を。  そう考えると、金額も積み上げられてゆく。  会場は、これまでで一番熱気に包まれた。

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