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第一章・最終話

 ホールは、嵐のような拍手で包まれていた。  日本の、神グループの主催とあって、客席は満員だ。  その満員の聴衆が、総立ちで拍手を送る。  空の演奏会は、大成功だった。  アンコールが、延々と続く。  用意していたアンコールの曲は、全て弾いてしまった。  残すは、一曲だけだ。  空は、袖に下がって雅臣の手を引いた。 「雅臣、隣に座って」 「空?」  拍手が鳴りやみ、静かになったホール。  音もなく空は、鍵盤に指を置いた。  清らかに奏でられるのは、バッハの『主よ、人の望みの喜びよ』。 「空、これは。この曲は」 「二人の、出会いの曲だよ」  懐かしい、あの日。  この曲と共に、雅臣と空は出会い、歩み、結ばれた。 「雅臣。僕、これからもずっと雅臣のためにピアノを弾いてもいいかな」 「ありがとう。嬉しいよ」  演奏が終わり、二人は万雷の拍手を受けた。  それは、二人の門出を祝うかのようだった。

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