27 / 93

第二章・4話

 涼真は、瑞を不憫に思った。  今日ケーキを作って来たということは、転職してきて間もないのに、もう何か嫌なことがあったのか。 「お菓子作りもいいけどさ、悩みがあったら何でも俺に言ってね。相談に乗るから」 「すみません、ありがとうございます」  甘いはずのケーキを少し塩っぱく感じたのは、白河の涙が混じってたからかな。  そんな風に考えて、涼真はコーヒーを口にした。    瑞のお菓子作りは、なかなか止まらなかった。  クッキー、パウンドケーキ、ピーチパイ……。 「今日は、フルーツタルトを作ってきました」  お昼の中庭で、いつものように瑞と涼真はお菓子を広げた。 「今回は、何があったの?」  スウィーツを食べながら涼真が瑞の悩みを聞くことも、もはや恒例行事だ。 「今日、初めて一人で取引先へ行くので。それで緊張してて」 「ああ、午後からだったね」  瑞が入社してから、数か月が過ぎていた。  これまではお目付け役として涼真が一緒に外へ出ていたが、今日から一人立ちだ。

ともだちにシェアしよう!