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第二章・4話
涼真は、瑞を不憫に思った。
今日ケーキを作って来たということは、転職してきて間もないのに、もう何か嫌なことがあったのか。
「お菓子作りもいいけどさ、悩みがあったら何でも俺に言ってね。相談に乗るから」
「すみません、ありがとうございます」
甘いはずのケーキを少し塩っぱく感じたのは、白河の涙が混じってたからかな。
そんな風に考えて、涼真はコーヒーを口にした。
瑞のお菓子作りは、なかなか止まらなかった。
クッキー、パウンドケーキ、ピーチパイ……。
「今日は、フルーツタルトを作ってきました」
お昼の中庭で、いつものように瑞と涼真はお菓子を広げた。
「今回は、何があったの?」
スウィーツを食べながら涼真が瑞の悩みを聞くことも、もはや恒例行事だ。
「今日、初めて一人で取引先へ行くので。それで緊張してて」
「ああ、午後からだったね」
瑞が入社してから、数か月が過ぎていた。
これまではお目付け役として涼真が一緒に外へ出ていたが、今日から一人立ちだ。
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