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第二章・3話

「白河くんは、お菓子作りが趣味なの?」 「あ、はい」 「すごく、美味しいよ」 「ありがとうございます!」  ぱくぱくと、調子よく食べ進む涼真。  瑞がひと切れ食べる間に、3切れは口にしている。  この細い体の一体どこに、そんな食欲が潜んでいるのやら。  コーヒーを飲みながら、瑞はおずおずと涼真に話しかけた。 「あの……、またお菓子作ってきてもいいですか?」 「いいけど、なぜ?」 「実は僕、ストレス感じたら夜中にお菓子作る癖があるんです」  入社して一週間。  瑞は涼真を、すっかり信頼していた。  大手商社から転職してきた理由を、しつこく尋ねることもない。  αだ、βだ、Ωだ、と差別することもない。  前社で身につけたスキルは、ちゃんと認めてくれる。  そして何より、優しい。  今日だってほら、一人でチーズケーキを平らげてくれた。  だから、今まで誰にも話したことのない秘密を、打ち明けた。 「ストレス感じたら、お菓子を作る?」 「はい……」 「食べる、んじゃなくって、作る?」 「ええ。作ってると、無心になれるんです。没頭して、嫌なこと忘れられるんです」

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