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第三章・8話
「だるい……」
朝、蒼生は起き上がれないほどの倦怠感に襲われていた。
昨夜は早く寝たし、そんなに疲れることもしていないのに。
体温計を使ってみると、微熱がある。
「風邪かな?」
微熱程度なら、動ける。
大学へは行こう、と朝食の準備をしたが、ご飯の炊けた香りに、激しい吐き気を覚えた。
食欲など、まるで湧かない。
「最近お腹が出てきてるし、食べなくてもいいや」
その程度の考えで朝を抜き、蒼生は登校した。
体に異変を感じたのは、ゼミを受けている最中だった。
お腹が、動く。
いや、お腹の中で何か動いている。
(何、これ!?)
吐き気が、また込み上げて来た。
「すみません、気分が悪いのでちょっと外へ出ていいですか?」
そう言う蒼生は、顔色がひどく悪かった。
ゼミの教授は、もういいから今日は帰りなさい、と言ってくれた。
「ありがとうございます」
普段の蒼生なら頑張るところだが、今回ばかりは甘えた。
それほど倦怠感と吐き気、気分の悪さはひどかった。
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