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第三章・9話

 思い当たるふしは、あった。  稀一から告白されて、もう数回の満月を迎えていた。  どうしよう。  心が、乱れた。  妊娠したんだ、僕。  強い発情抑制剤を服用しているから、大丈夫だと思っていたのに。  発情期にはセックスしないように、気を付けていたのに。  でも、稀一さんは僕を愛してくれている。 (勇気を出して打ち明けよう)  思い切って、蒼生の方から稀一を呼び出した。  初めて愛を告げられた、あの場所へ稀一を誘った。  月明かりの下だと、何だか素直になれますよね。  あの時の稀一の言葉を借りて、蒼生はそう切り出した。 「どうしたんだ? 突然こんな所へ呼び出して」  空には、満月。  きっと、初めてのあの時に、授かったに違いない。  そんな風に、蒼生は感じていた。 「あの……、できちゃったみたいなんです」 「できた? 何が?」 「……赤ちゃん」  稀一は、笑った。 「どうして? まさか、避妊してなかったのか?」 「ごめんなさい、僕にも解らないんです。でも、妊娠の兆候が見られて……」

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