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第三章・11話

 捨てられた。  あんまりだ。 「稀一さん……、稀一さん!」  蒼生は、自分の安アパートで散々泣いた。  泣きながらも、明日の予定を考えていた。  病院へ行こう。  悔しいけど、情けないけど、中絶にかかる費用を、聞こう。  そして、稀一さんに払ってもらおう。  実家に、両親にこんなこと言えやしないんだから。 「ごめんね……、僕の赤ちゃん!」  泣き疲れて寝てしまうまで、蒼生は涙を流していた。 「想像妊娠ですね」 「え!?」 「赤ちゃんは、できていません」  そんな、と蒼生は思わず声を漏らしていた。 「病院に来る前に、ちゃんと妊娠検査薬で調べましたか?」 「え!? あ、いいえ」  やれやれ、と医者は肩をすくめた。 「女性にとっては常識なんですがね。Ωにも、そういう知識は教育してもらわなきゃねぇ」  せっかく病院まで足を運んだのだから、と医者は蒼生に妊娠検査薬とその使い方をレクチャーしてくれた。 「いなかったんだ……、赤ちゃん……」  でも、稀一さんは。  稀一さんを、失ってしまった。  僕の早合点で!

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