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第三章・12話
「でも」
あの仕打ちは、いくらなんでもひどい、と思った。
稀一さんのことは、愛している。
今でも。
だからこそ……。
蒼生は一つの決意を胸に、友人の一人に電話を掛けた。
同じテニスサークルに所属する、同じΩの親友だ。
「あのさ、僕、妊娠しちゃったみたいなんだ」
『嘘! マジ!?』
「でもね、病院に行ってみたら、想像妊娠だった、ってオチ」
『何だよ、もう。驚かすなよ』
「それで、頼みがあるんだけど」
蒼生は友人に、その話をサークル内で広めてほしい、と頼んだ。
『何で? お前が笑いものになるだけじゃん』
「いいんだ。やがて、僕の利になって返って来るから」
『……? そんなら、いいけど』
これでよし。
蒼生は電話を切って、口の端を上げた。
稀一さん、覚悟はいいね?
あなたは、僕にとっていつまでたっても手の届かない人だった。
恋人になっても、それは同じだった。
そんな稀一さんに、僕の場所まで降りてきてもらうよ。
翌日を楽しみに、蒼生は眠りに就いた。
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