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第四章・1話
夏目 都(なつめ みやこ)は、苦労人だ。
高校一年生の冬、父親が失踪した。
成績が良かった都は授業料免除の特待生として入学していたので、退学はせずに済んだ。
しかし、今度は母親だ。
高校二年生の春、新しくできた男の所に入りびたりで、家庭を全く顧みなくなってしまった。
都には、二人の弟がいる。
どちらも中学生で、まだまだ教育費がかかる年頃だ。
おまけに、食べ盛り。
たまにふらりと帰って来る母が、ギャンブルで儲けた金をいくらか置いて行ってはくれるが、とても足りない。
「仕方ない。僕が稼がなきゃ」
バイトは禁止の学校で、都は密かに裏バイトをすることにした。
クラスの一斉ラインで、彼はこう宣言したのだ。
『何でも屋、始めました』
「おう、夏目。宿題見せてくれよ」
「いいよ。何問?」
「数学、5問」
「毎度あり~♪」
一問100円で、都は宿題のノートを貸し出した。
難しい問題が出た時は、稼ぎ時だ。
都は主に、宿題の代行をやっていた。
もちろん『何でも屋』というからには、他の仕事も選ばない。
シューズの洗濯、購買への使い走り、掃除当番。
ラブレターの代筆、なんてものまでやってのけた。
そうやって小銭を稼いでは、弟たちの面倒を見ていた。
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