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第四章・7話

「で、でも。何で、僕!? 他にもいるじゃない、Ωの子とか、女子とか!」 「だけど、便利屋は夏目だけだろ? 仕方ないじゃないか」  下手な感情移入をせずに、恋人を演じてくれる人物が欲しいんだ、と雄翔は言う。  どうして、そんなややこしいことを。  都は不思議に思ったので、訊いてみた。 「どうせなら、ホントの恋人を作ればいいじゃん。神谷くんモテるし、楽勝でしょ?」 「いやその……。最近、家庭教師に『交際の方法』を学んでてさ。実践してみたいんだ」  本当に恋人ができた時にしくじるわけには、いかないだろ?  そんな雄翔を、やはり都は少し苦手に感じた。  だが、それも仕方のないことだ、と諦めた。 (神谷くんと僕とは、住んでる世界が違うんだな)  お金のため、と割り切れば問題ない。 (たぶん神谷くんは、恋人ごっこがしたいんだ。一緒にデートしたり、勉強したり)  それで一日1万円なら、オイシイ話だ。  そのうち身体を求めてくるかもしれないが、別に構いやしない。 (もう、慣れちゃったし)  ふっ、と都は息を吐いた。 「いいよ。僕、神谷くんの専属便利屋になって、恋人を演じてあげる」 「そうか! じゃあ、さっそく!」  雄翔はその場で、ポチ袋に入った札を渡してきた。 「さっそく、って。今から? もう、放課後だけど!?」 「いいんだ。『放課後にカフェでドリンクを楽しむ』というシチュエーションを楽しんでみたい」 「解った。じゃあ、行こう。雄翔」 「ゆ、雄翔!?」 「恋人なら、姓じゃなくて名で呼ぶでしょ。普通」  ふるふると震え、雄翔は感激している。 「家族以外に、名前で呼んでくれる存在がいるなんて……」  大げさだなぁ、と都は雄翔の手を取った。 「てッ、手を握る、とか!」 「恋人同士なら、手ぐらい握るでしょ」  さあ、とその手を引くが、雄翔は動かない。

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