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第四章・8話

「どうしたのさ?」 「ちょ、待っ……。鼻血が……」 「鼻血!?」  何と雄翔は、都に手を握られただけで、のぼせ上って鼻血を出してしまったのだ! 「大丈夫?」 「ハンカチ、あるから」  雄翔はポケットから高価そうなハンカチを出して、鼻に当てた。 (ちゃんとハンカチ学校に持ってくるなんて、小学生みたい)  都はそれを少し可笑しく感じたが、今は擬似恋人なのだ。  精一杯、心配して見せた。 「今日はもう、帰った方が良くない? カフェは明日にでも」 「いや、行く! 這ってでも、行く!」  意外に子どもっぽい強情さを見せる、雄翔だ。 「何で? カフェは逃げてはいかないから……」 「楽しみにしてたんだ。放課後カフェ」 (え……?)  雄翔ったら、1万円ポチ袋に入れて、学校終わるまでずっと楽しみに待ってたの?  とまどう都に、雄翔はようやく笑顔を見せた。 「止まったよ、鼻血。さあ、行こう」 「う、うん」  歩き出す都を、雄翔はじっと見ている。 「な、何?」 「手は、つながないのか?」  都は、何だか気恥ずかしくなっていた。  さっきは、自分から手を握ったのに。 「また、鼻血出るかもよ?」 「そうか。それは困るな」  じゃあ、と雄翔は小指を出した。 「小指つないで、歩こう」  都の頬は、赤く染まった。 (何か雄翔、すっごく可愛いんだけど!?) 「し、仕方ないなぁ」  二人は小指を絡ませて、カフェへと向かった。

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