68 / 93
第四章・8話
「どうしたのさ?」
「ちょ、待っ……。鼻血が……」
「鼻血!?」
何と雄翔は、都に手を握られただけで、のぼせ上って鼻血を出してしまったのだ!
「大丈夫?」
「ハンカチ、あるから」
雄翔はポケットから高価そうなハンカチを出して、鼻に当てた。
(ちゃんとハンカチ学校に持ってくるなんて、小学生みたい)
都はそれを少し可笑しく感じたが、今は擬似恋人なのだ。
精一杯、心配して見せた。
「今日はもう、帰った方が良くない? カフェは明日にでも」
「いや、行く! 這ってでも、行く!」
意外に子どもっぽい強情さを見せる、雄翔だ。
「何で? カフェは逃げてはいかないから……」
「楽しみにしてたんだ。放課後カフェ」
(え……?)
雄翔ったら、1万円ポチ袋に入れて、学校終わるまでずっと楽しみに待ってたの?
とまどう都に、雄翔はようやく笑顔を見せた。
「止まったよ、鼻血。さあ、行こう」
「う、うん」
歩き出す都を、雄翔はじっと見ている。
「な、何?」
「手は、つながないのか?」
都は、何だか気恥ずかしくなっていた。
さっきは、自分から手を握ったのに。
「また、鼻血出るかもよ?」
「そうか。それは困るな」
じゃあ、と雄翔は小指を出した。
「小指つないで、歩こう」
都の頬は、赤く染まった。
(何か雄翔、すっごく可愛いんだけど!?)
「し、仕方ないなぁ」
二人は小指を絡ませて、カフェへと向かった。
ともだちにシェアしよう!