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第四章・9話

「夏目、何飲む?」 「雄翔は、もう決まったの?」  そこで雄翔は、少し胸を反った。 「ブレンドを、ブラックで。当然だろ?」 「大人だなぁ」  そう言う都は、キャラメル・ラテを頼んだ。  カフェなんて、久しぶりだ。  浮き浮きした心地で、都はトレイを持って雄翔の待つ席に戻った。 「雄翔、今回は僕がトレイ持って来たけど、相手が。デートの相手が本当の恋人なら、雄翔が運んだほうがいいと思うよ」 「何で?」 「その方が、恋人は喜ぶよ。大切にされてるんだなぁ、って。特に、女性は」 「そうなのか……」 「そうだよ」  そんなことを話しながら二人はドリンクを飲んだが、雄翔は眉間に皺を寄せている。 「どうしたの?」 「いや、別に」  そんな雄翔に、都はニヤニヤしながらミルクと砂糖を掲げて見せた。 「やっぱり、まだブラックは早いんじゃないの?」 「うぐぐ……」  僕、入れてあげるね、と都は雄翔のコーヒーにミルクをたっぷり、砂糖をちょっぴり足してあげた。 「どう?」 「うん、美味しい」  カフェ・オレになったコーヒーを飲みながら、雄翔は都に訊ねた。 「今の、ミルクや砂糖を入れてあげる、というのも、相手は喜ぶのかな」 「うん~、あんまり細かく考えないで、自分がやってもらって嬉しいことをしてあげればいいと思うよ」 「そういうもの?」 「そういうもの」 「じゃあ、夏目はフェラーリを贈ってもらったら喜ぶ?」 「飛躍しすぎ!」

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