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第四章・16話
学校は夏休みに入り、学業はやや楽になった。
補習のない日は、フリーだ。
土日祝日も、模試のない日は休める。
そんな休日前に、雄翔は都を誘った。
「花火大会に行かないか? 二人で打ち上げ花火を観よう」
「う~ん……」
花火大会の会場は、有料スペースになっている。
素敵な屋台が出て、誘ってくる。
お小遣いが、いくらあっても足りないのだ。
そして都は弟二人に、すでにお小遣いを与えていた。
自分の分までは、ちょっと厳しい。
「ね、雄翔。僕の家で、花火しない?」
「都の家で?」
「手持ち花火、しようよ。スイカも出すよ?」
雄翔はOKしてくれた。
「あ、雄翔! 浴衣着て来たんだ!」
小千谷縮の本麻、落ち着いたグレーの浴衣を、雄翔は粋に着こなしていた。
「似合うか?」
すごい、すっごく似合ってる、と褒める都に、雄翔は胸を張った。
「都と一緒に花火大会に行くつもりで、仕立てておいたんだ」
「あ……、ごめんね」
そんなことなら、少し貯金を下ろして花火大会に行けばよかった。
しかし、雄翔は都を責めはしなかった。
「花火、しよう。スイカもあるんだろう?」
「花火には、まだ明るいよ」
雄翔の持ってきた手みやげのアイスクリームを大切に冷凍庫に入れると、都は小振りのスイカを取り出した。
「何て可愛いスイカなんだ! こんなに小さくて、甘いのか!?」
「最近のスイカは、みんなこうだよ」
富豪の雄翔は、今でも大きな大きなスイカを食べているのだろう。
ささいなことでも驚く雄翔を微笑ましく感じながら、都はスイカに包丁を入れた。
「種がある! 種のあるスイカは、絶滅したと思っていたのに!」
「雄翔、いちいち驚きすぎ」
二人で縁側に座って、甘くて冷たいスイカを食べた。
種の飛ばしっこも、やった。
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