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モンスターの要求?

 男が予約したのは、運勢を気楽に鑑定する四十分のコースだった。予約を受けたあと、男の噂を何か聞けないものかと、聖霊達に探りを入れたが、彼らは拗ねたようにだんまりを決めていた。彼らの移り気がそうさせるようで、今までにもままあった。それでアスカは気にしなかった。噂好きの彼らは黙っていられない。人間の客が席に着けば、いつの時にも一斉に喋り出す。男の場合もそうなると思っていた。  精霊達がモンスターの噂をしないのは、仲間意識とは違う。彼らはモンスターの悠久の歴史にも精通している。人間が織り成した歴史に埋もれるようにして生きて来たモンスターが存在を明らかにしようというからには、弱みとなる情報が人間に漏れないよう予防線を張る必要があった。  遥か太古の昔、モンスター達の存在が否定されていなかった頃、アスカのような人間がモンスター討伐の鍵になっていた。討伐の再来を望まない精霊達はモンスターの要求を呑んだのだった。

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