聖霊は生物にも無生物にも宿っているが、アスカが聞くのは無生物に宿る精霊の声だけだった。自然界に存在するものはもちろん、人間が作り出した人工物にも宿っている。人間が身に着けるもの全て、その持ち物全ての聖霊達から話が聞けた。 　死者の声も聞こうと思えば聞くことは出来る。ただ、殆どが恐ろしい形相で恨み言ばかりを伝えて来る。子供の頃は恐怖に震えていたが、聖霊達に遮断することを教えられてからは、至って平和に過ごしている。 　聖霊達は噂好きだ。中でも人間の噂が大好きだった。ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、ひとたび話し出すと、かしましいくらいに騒ぎ出す。うるさいと言えばそうだが、恨み言を聞かされるよりは何倍も楽しい。 　要するに、アスカの占いは噂の又聞きといったところだ。アスカの都合にお構いなしだが、人間相手に占いをするには十分だった。アスカの霊媒が役立たずというのは、そういうことだ。彼らはモンスターの噂を絶対にしない。