アスカは喧嘩上等で生きて来たが、両親には知られずに済んでいる。幾つになっても、素直でおとなしい子供と思われている。似た者同士の二人は、互いにどこか抜けていることに気付けないでいるようだ。アスカがモンスター居住区に移住したことも、一時の気の迷いと、二人して本気で信じていた。 　困った二人だが、アスカには大切な存在だ。両親に悪さをするような連中には、必ず仕返しをする。生者だろうと死者だろうと、ただでは置かない。そのことは聖霊達にも伝えてあった。ろくでもない噂ばかりを聞かせる彼らだが、こと両親に関しては、自制してくれるようになった。 　お返しはされた。突如、彼らはけたたましい叫び声を上げる。彼らの喋りを、軽く聞き流せるようになったアスカを驚かせたいが為だけにする。あたふたするのを見て、楽しんでいるのだ。お陰でアスカは逃げ足が速くなり、捕まるような間抜けにならずに済んだが、ありがたさは微塵も感じなかった。