ヴァンパイアに与する気は毛頭ないが、『人間外種対策警備』の職員になるより他に道がない能力者からすると、アスカは変わり種だ。人狼と能力者の群れに加わるつもりがなかったアスカからすると、幸運でしかない。 　占いをして稼ぐ。聖霊達の勧めは、その意味では渡りに船だった。人狼のアルファに、服従のポーズを見せずに済んだ。仰向けになって寝転がるのも、仲間の尻の匂いを嗅ぐのも、アスカには出来そうもないことだった。 　それでも『人間外種対策警備』が様々な機関から信頼される優良企業というのは、否定しない。検査の立ち合いも含め、モンスターと人間とのあいだに起きた苦情を迅速に処理する。その手腕は認めていた。 　アスカはまだ人間の客と揉めたことがないが、モンスター居住区に出入りする人間が増え続ける現状では問題も多発する。一部区域が観光化され、人間の出入りを許したからのようだ。アスカもその区域の端っこに居住し、占いの店を開いた。