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不意に不安が?

 ヴァンパイアにしても、人狼と大差ない考えだっただろう。モンスター居住区に移って来た新顔のアスカが、何者なのかに気付いていないはずがない。興味のないふりをしながらも、人狼同様に遠くからアスカを見張っていたに違いない。  アスカがモンスター居住区で近所付き合い一つ出来ないのは、そういった諸事情のせいだ。馬鹿馬鹿しいと思ったが、アスカは両親の言い付けを守って、近所のモンスターに引っ越しの挨拶をして回った。予想通り、彼らとの付き合いはその一度きりだった。  こちらに移り住む前も同じような境遇と思えば、気にならなかった。それなのに、わざわざ電話で予約までして、ヴァンパイアがお出ましになった。その男がアスカの〝もろタイプ〟となると、偶然というには出来過ぎな気がしないでもない。  不意に不安が頭をもたげ、アスカはフードの奥から男を窺い直した。笑っていなかったのを救いと思ったが、笑われていた方が気も楽なように思えた。

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