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遠巻きに監視?

 『人間外種対策警備』の『霊媒』がその気になって、浄化も難しい悪に手を出せばどうなるのか、魂ごと丸呑みされるだろう。『霊媒』の肉体と魂こそが、悪と化した死者の好物なのだ。飢えと渇きに苦しむ亡者のようにむさぼり食らい、力を強めて行く。  元が人間であったモンスターも、救いのない悪と言えなくもない。人としての魂は失くしたも同然なのに、人としての記憶にはしがみ付いている。それでも恨みつらみを言わない分、救いはある。彼らは過去を葬り、未来に生きようとしている。過去に拘り、人間の未来を食い物にする悪とは違う。  それも全て昔の話だ。今の世の中ではまず起こり得ない。『霊媒』の身も安全だ。人狼のアルファが検査に立ち会った職員の報告を承認したのも、そこら辺りが理由だろう。能力者達の耳に余計な話が入らないよう親しくさせたくないが、アスカのことも野放しにしたくない。モンスター居住区に囲って、遠巻きに監視するのが最善だ。

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