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悲恋の幕開け?

 ヴァンパイアの恐怖より、恋にうぶな自分の気持ちを怖がるとは間抜けな話だが、空想と現実の差は大きく、びくついてしまう。それでも逃げ出すのは悔しい。おっかなびっくり進むしかないと、アスカは思った。 〝初恋なんて、こんなもんさ〟  そう心の中ではっきり認めることで、人生の真理を悟れた気もする。まさかの最初があったのだ。次があってもおかしくない。この危うい状況の中での大収穫と、アスカは自分で自分を慰めた。  次の出会いを期待するのなら、男とはこれ切りにする必要がある。平穏な暮らしが壊れるとわかっているのに、恋の為にかかわる馬鹿はいない。〝もろタイプ〟は、余りに危険過ぎる生き物だ。だからこそ、精霊達の噂のネタには最高だった。  聖霊達の興奮がビシバシと飛んで来る。男を気にして我慢しても、騒ぎたくてうずうずしている。アスカを主人公にしたヴァンパイアとの悲恋の幕開けを、今か今かと待ちわびている。たまったものではない。

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