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占い師と客?
ヴァンパイアは目にも留まらない速さで移動する以外は、小揺るぎ一つしないようだ。男もアスカの横に立ったあと、見事に固まっていた。半死人と言われるだけあって、死人のような硬直ぶりだが、値が張る衣装をまとった洒落たマネキンと言った方が近いかもしれない。
男が椅子に座っていた時は、死後硬直に勝るとも劣らないマネキン男に、アスカはまだ我慢出来た。ヴァンパイアの訪問に思い悩み、初恋らしき感情を抱きもしたが、男の目線が僅かな身長差と同じだったことで、気持ち的には対等でいられた。立たれると、その頭上から見下ろされているようで落ち着かない。濃紺のスーツをそつなく着こなせる雄々しい体躯にも半端ない威圧があり、イラつかされる。
〝クソマジにヤバい声の男〟が〝もろタイプ〟だとしても、独りよがりな幻想が思わせたことだ。甘々にはなれない。占い師と客という関係を変えるつもりもない。平穏な暮らしには、それが何より重要だった。
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