110 / 811

愚弄?

 危ないモンスターであっても、アスカの〝もろタイプ〟は安心安全な男だ。初恋らしきものを感じたアスカにすれば、〝もろタイプ〟が極めて安全というのは面白みのない話だが、ヴァンパイアである男の糧になったのを理由にしたくはない。 〝あやつに手出しさせぬ為〟  男が身勝手にもアスカを糧にした理由がこれだ。〝あやつ〟がこの別荘の主人というのは、ほぼ間違いない。時代錯誤な監禁をイメージさせるような主人であるのなら、安心安全な男こそがアスカには必要だった。 「正面に回る」  男が別荘の主人について答えようとしないことで、アスカは思いの正しさを確信した。それより今はロングドレスが悩みだ。大股で歩く男に付いて行こうとすると蹴躓きそうになる。女扱いされていないだけよしと思っても、少しは気遣わせたくなる。 「面倒なんだよ、そこの裏口から入りゃいいだろ」 「裏口?私を愚弄するのか?」  全くもって訳のわからない野郎だと、アスカは思った。

ともだちにシェアしよう!