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愚弄?
危ないモンスターであっても、アスカの〝もろタイプ〟は安心安全な男だ。初恋らしきものを感じたアスカにすれば、〝もろタイプ〟が極めて安全というのは面白みのない話だが、ヴァンパイアである男の糧になったのを理由にしたくはない。
〝あやつに手出しさせぬ為〟
男が身勝手にもアスカを糧にした理由がこれだ。〝あやつ〟がこの別荘の主人というのは、ほぼ間違いない。時代錯誤な監禁をイメージさせるような主人であるのなら、安心安全な男こそがアスカには必要だった。
「正面に回る」
男が別荘の主人について答えようとしないことで、アスカは思いの正しさを確信した。それより今はロングドレスが悩みだ。大股で歩く男に付いて行こうとすると蹴躓きそうになる。女扱いされていないだけよしと思っても、少しは気遣わせたくなる。
「面倒なんだよ、そこの裏口から入りゃいいだろ」
「裏口?私を愚弄するのか?」
全くもって訳のわからない野郎だと、アスカは思った。
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