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変わった?
「フードは好きにすればよい、我らは騙されぬ、君も承知していよう」
クソマジにヤバい響きは感動ものだった。甘くゆったりとして渋い。それも今のアスカには苦痛でしかない。瞬間的に胃がひやっとし、裏切り者のアソコでさえ縮こまっている。そのあいだも男の話は続く。
「だが、あやつは厄介、見目麗しい少年と侮るは間違い、口は慎むに限る」
無表情なヴァンパイアにしては長舌だろう。男はそれだけの時間を掛けて移動したと言いたいようだ。気付くと、アスカは中世の居城のような別荘の表玄関に立たされていた。吐きそうだった。
「うぅっぷ」
アスカは男の腕を掴み、それを支えにしてえずいた。幸いにも男の革靴に唾が散っただけで済んだ。男にはそうも行かない。足元へと視線を下げ、引き気味に片眉を吊り上げる。それでもアスカの支えではあり続けた。
「君は変わらないな」
そこで男の甘い響きに、僅かに怒気が漂う。
「いや、変わった、私の知らない君がいる」
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