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一瞬で目的地?
占いの小部屋でも男に殴り掛かっている。あの時は軽くかわされ、自慢だろう硬い胸に引き寄せられた。ヴァンパイアの瞬間移動と怪力に負けたのだが、拳に自信があったアスカには屈辱だった。今はあの時とは状況も違う。庇護しなくてはならない糧を相手に、男がどういった態度に出るのかはわからない。
アスカの頭に、もしかしたらと甘い考えが浮かぶ。実際、男はヴァンパイアらしくぴくりとも動かなかった。みぞおちへの一発が見事に命中したと、アスカにはそう思えた。寸止めした位置で拳を掴み取られたと知ったのは、男にひょいと軽々抱き上げられたあとだった。
「ちょっ」
恥の上塗りに腹を立てる間もなかった。アスカは自分への悪態を慰めにした。
「ああ、クソっ」
「おとなしくしていろ、君も早く終わらせたいだろう?」
ロングドレスに足をもたつかせるアスカの苛立ちに、男は気付いていた。その解決策がこれだ。アスカを抱いて一瞬で目的地へ向かう気でいる。
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