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誘ってねぇか?
「すげぇな」
それが素直な感想だった。時代錯誤な妄想を抱いた尖塔が目に付き、別荘全体に禍々しさを感じたが、それも仄暗い裏口に立って見上げたからかもしれない。表玄関から望む建物には、金満家らしいヴァンパイアの豪華さ以外、何も感じない。
「普請したは……」
男にも差し障りない話題のようだ。意味不明な怒りを漂わせていた甘い響きにも、明るさが戻っている。男はアスカがかかわろうとしないことで知らずにいたことを、さり気なく語り聞かせて行く。
「異国文化に沸き立つ前世紀初頭、この辺り一帯が別荘地となるより前のことだ、建てたはよいが、居住せず放置してあった、私有地である為、長きにわたり隠されることにもなった、あやつはそこを気に入り、住まいとした、この地区が観光化されたとて、何も変わらぬ」
「けど……」
アスカは視線をドアへと向けた。上部にバラ窓を持つ木製ドアは、覗いて欲しげに開け放たれている。
「誘ってねぇか?これ?」
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