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キイ?
死者の瞳に浮かぶ感情の発露が、しわがれ声にはわかっていない。落ちこぼれな『霊媒』らしく、安心安全な男に守られる位置にちんまりするアスカを馬鹿にはしても、警戒しようとは思わないようだ。口を閉じて静かにしていたことも、しわがれ声を調子付かせたのだろう。
「ヌシ様は応接室にてお待ちにございます」
そこにいないかのように無視されたのには、さすがにアスカもむすっとしたが、続く言葉に男の名前を知らされ、それどころではなくなった。
「キイに案内は不要、そのように申し付けられております」
「キイ?」
アスカは咄嗟に口だけ動かし、声を出さずに呟いた。
「マジか?」
男が名乗ろうとしなかったのも頷ける。男の好みとは思えなかった。ヌシが名付けたのだろう。ヌシも相当おかしな名前だが、機微な部分で同類らしさを感じさせる。既に男の名前を知っているという不思議な感覚が示すものとの違いに、アスカは笑った。名付けた経緯が知りたくなった。
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