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一人の人間も?
「俺も知らねぇし」
男二人の会話を情景たっぷりに映し出す精霊達の声色に感心しながら、アスカはぼそっと殆ど声にしないで言った。
「知る訳ねぇか」
モンスター居住区に移住する直前、アスカはこれから暮らす場所を知ろうと、その地区での人口推移を調べていた。人間外種に登録変更しようと決めた年に国勢調査があったことも、アスカをその気にさせたのだった。結果は増減なしだった。能力者による移住がなかったことと、移住した能力者の死亡の報告もなかったことによるものとあった。次の調査では、アスカの存在もあって人口増加となるだろう。減少についてはわからない。能力者も肉体的には普通の人間だ。モンスター基準にはない。年を取り、病に倒れもする。
調査を信じるのなら、モンスター居住区での人口推移は能力者次第のようだ。モンスター達は種族間で反目しても争いを避け、はぐれ者を出さず、時代の変化後に一人の人間も変異させていないことになる。
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