220 / 814

見せてろ?

 男がアスカとヌシのあいだに立つのは、糧との関係で許されている。〝キスマーク〟を持つ糧を守るという内々の定めによってだ。頂点に君臨するヌシでさえ、感情は弄べても、直接には手を出せない。破ればどうなるのかは男の話でわかっている。 〝仕置きをする、禁を犯した仲間のみならず、糧にも〟  ヌシの変異は〝特別〟だ。チヲカテトスルモノに選ばれ、その化身になっている。しかし、そこにもヴァンパイアの序列の厳しさがあることに、アスカは気付いた。 「マジか」  男の忠告を思い、気持ちを抑えて言葉を繋げる。 「用があんの、そっち?」  ヌシに〝黙って〟と言われたあとだ。アスカの腕を掴んで向き合う男には意味不明だろう。当然と理解もするが、怒りのままに、切なげだった眼差しを〝余計なことを考えるな〟といったものに変えられては、何か返さないことには気も収まらない。 「ケツと背中」  アスカは顎先で回れと示すようにして続けた。 「俺には見せてろよ」

ともだちにシェアしよう!