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見せてろ?
男がアスカとヌシのあいだに立つのは、糧との関係で許されている。〝キスマーク〟を持つ糧を守るという内々の定めによってだ。頂点に君臨するヌシでさえ、感情は弄べても、直接には手を出せない。破ればどうなるのかは男の話でわかっている。
〝仕置きをする、禁を犯した仲間のみならず、糧にも〟
ヌシの変異は〝特別〟だ。チヲカテトスルモノに選ばれ、その化身になっている。しかし、そこにもヴァンパイアの序列の厳しさがあることに、アスカは気付いた。
「マジか」
男の忠告を思い、気持ちを抑えて言葉を繋げる。
「用があんの、そっち?」
ヌシに〝黙って〟と言われたあとだ。アスカの腕を掴んで向き合う男には意味不明だろう。当然と理解もするが、怒りのままに、切なげだった眼差しを〝余計なことを考えるな〟といったものに変えられては、何か返さないことには気も収まらない。
「ケツと背中」
アスカは顎先で回れと示すようにして続けた。
「俺には見せてろよ」
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