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黙って?
〝特別〟というものには並外れた能力が付きまとうが、妬みや裏切りといった不安を抱き、孤独になる。平穏な暮らしを望むアスカにとって〝落ちこぼれの用なし〟であることは、逆の意味で孤独だが、不安はない。精霊達はアスカに怒鳴り付けられようが、〝ウフフクフフ〟と煙に巻き、側にいることでアスカを守っていた。
〝小雀どもはいない〟
男が言ったままに理解すればわかることだ。不動産会社の担当の手管で買わされた売れ残りの別荘も、元々が精霊達の溜まり場で、彼らの出入りは人間とその持ち物なしに自由だが、モンスターの巣窟であるこの変態屋敷にそうした自由はない。ヌシと裏で話を付けたはずが、結局はアスカの到着と同時に追い払われている。男が〝感情的になるな〟と言った意味も、精霊達がいなければヌシにはアスカの感情を幾らも弄べるということのようだ。
「キイ」
ヌシがアスカの思いに頷くように男を呼んだ。そして笑いながら言った。
「黙って」
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