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ヌシも〝特別〟?
ヴァンパイアに変異するには純粋な激しさを必要とする。変異の激痛に耐え抜く根性も忘れてはならない。それ程の強さを持つ者達が、溢れ出る感情を無表情で押し隠す。肉体をモンスターへと変異させても、感情への変化はない。ヌシに差し出した魂は人質のようなもので服従を強いられる。不満があっても無表情で悟らせないようにするしかない。逆らえば苦痛が待っている。
〝や……めろ〟
男がヌシに吐いた否定が、それを物語っていたのだろう。ヌシは表情豊かに子供っぽく楽しげに話し、合間に大人びた妖しさを漂わせ、感情を抑えようとする者達をいたぶる。不意に見せる無表情には本物の恐怖を匂わせる。
感情を弄ぶことは、ヌシには血を糧とするのと同じのようだ。最高の味には褒美に変異を授け、勘気に触れたのなら魂で償わせる。その行き先はまったき闇だ。ヌシが―――チヲカテトスルモノがそこへ落とす。となるとヌシも〝特別〟と、アスカは妙に納得して思う。
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