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して欲しいこと?

「仕方ねぇな……」  アスカは心持ち不機嫌に呟いた。〝余計なことを考えるな〟と平気で言えるような男の言いなりにはなりたくない。それでも顔を立ててやりたいとも思う。そうなるとアスカが男にしてやれることに選択肢はない。 「夜通し睨み合いたいってのなら、俺も付き合うまでさ」  覚悟を決めれば腹立ちも静まる。アスカは楽な姿勢に足を広げ、逞しいケツと背中に視線を定め、記憶にある魅惑的な裸体を思いながら、男のムキムキな色気を楽しみ始めた。  男がアスカのにやつきに気付いていたとしても、男にはそうした気配が一切ない。ヌシと向かい合った瞬間から完璧な無表情で全てを黙殺している。男は頭越しにされていたことがその手に戻されたと、わからないような間抜けではなかった。 「お兄さんにして欲しいことがある」  ヌシが不意に言った。睨み合いを続けても時間の無駄と察したのだろう。声音の冷たさには苛立ちと悔しさが微妙な翳りとなって滲んでいた。

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