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これには驚き?
「僕、気に入ったよ」
ヌシはニコッとし、視線を男からアスカへと流していた。ヌシには遊びであり御馳走だ。男の苦悩に勝る旨みはないにしても、しわがれ声の嫉妬をつまみに、性懲りもなく無駄話を続けるつもりでいる。そうした思いでアスカは身構えたが、ヌシにその気はなかったようだ。
「動画の子、行方不明」
ヌシは唐突に本題に入った。しかし、それ以外に言葉を繋げない。アスカはさっきまでの饒舌ぶりを思い、お喋りなクソガキはどこへ行ったと苛立った。
「で、探せと?」
仕方なくアスカが繋げると、ヌシが子供っぽい仕草で首を横に振る。その後は何もない。
「クソっ」
ヌシにも言われたが、アスカは〝せっかち〟だ。すぐにイラつき、怒鳴ってしまう。〝感情的になるな〟と忠告されても一時的な制約にしかならない。そこをヌシに突かれた。ヌシはアスカが顔を顰めるのを待って嬉しそうに答えている。
「人狼」
「人狼?」
これには驚き、アスカの声も裏返った。
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