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目的を楽しむ?
「クソっ」
アスカはむすっとし、拗ねるように言った。男の思いを傷付けたことには気付いている。悔やみもするが、それで謝ろうという気持ちにはならなかった。男にはそれで良かったようだ。ドアにもたれ掛かったまま、横目でアスカを憎々しげに睨んでいたが、ふと視線を真っ直ぐにし、夜も更け掛けた星空の遥か遠くを見遣る。その眼差しにはぬくもりがあった。
「ヌシがあの場に人間を迎え入れたは……」
男の白蠟気味の肌が夜の闇に仄かに輝く。内に隠す感情が輝かせたのだろう。男は口調にも優しさを漂わせ、ヌシがしようとしていたことを話し始めた。
「小雀どもを引き入れるが為、君に仕事をさせるには小雀どもを使うが早い、軽薄な者どもだ、あやつの手に掛かれば造作もない」
それが細く柔らかな声を聞き付け、ヌシは本来の目的を楽しむことにして、人間諸共、聖霊達を追い払った。アスカはそこには触れず、静かに話す男のクソマジにヤバい響きに耳を傾けた。
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