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男の気性?
「あやつは君の意識で悪さを?」
男はアスカに答えて欲しい訳ではないようだ。すぐに話を継いでいた。
「何をしたかは想像に容易い、あれと……」
〝あれ〟が人を示し、それが誰であるのかはアスカにも想像に容易かった。言い慣れた口調には愛おしさが感じられる。男も意識しない思いに気付いたのだろう。さり気なく言い直していた。
「君と直に繋がれば、糧に手は出せぬという定めも無意味、故に、あやつは君を〝気に入った〟と申した、くれと、私にねだったようなものぞ」
男の話は大筋でアスカの考え通りだったが、〝ねだった〟だけは思いもしないことだった。瞬間移動で強制退室させられたことで救われたと、アスカにもわかる。要するに、男はヌシにもなびかない強情さでしわがれ声を怯えさせたが、同じように、聞きたくもない小言でアスカを震え上がらせる気でいる。
「あの動画」
アスカは男の気性を思い、焦り気味に話題を移した。
「あんたらと関係ねぇんだろ」
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