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評判の男?

「うわぁ、凄いな」  フジはヤヘヱにこう返していた。アスカの聖霊達と違って、男の超高級な腕時計に潜り込んでいたのだ。最初から特等席にいたヤヘヱに凄いことは何もないと思うアスカだが、喋り出したら止まらない精霊魂をうまく刺激するフジには凄さを感じた。 「それで?それで?」  フジの有能さからすれば当然なのかもしれない。小心者の癖に威張りたがりの単細胞を乗せるのも簡単だ。ヤヘヱはフジに促され、怪しげだった口調もなかったことにして、得意げに語り出していた。 〝さる程に、我らが殿とわたくしが出会いし時……〟 「うんうん」  そこから始めるのかと驚くアスカを尻目に、フジは絶妙な頃合いで相槌を打ち、精霊特有の散漫になりがちな話を誘導し、変態屋敷で起きたことを聞き出して行く。合間におだてることも忘れないでいた。 「ヤヘヱさんが羨ましいよ」  〝仕事となると人が変わるという評判の男〟は、食えない奴でもあったのだと、アスカは知った。

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